狭小邸宅 新庄耕

不動産販売業の主人公が自社や業界への嫌悪感?辞めたい願望を抱きながらも、ある先輩との出会いをきっかけに、自分自身もあちら側の世界にのめり込んで行く様を描いた作品。


厳しいノルマ、上司からの制裁、長時間労働、、、

それでも自分の置かれた環境に、ある種の

諦めと折り合いをつけながら生きてきた主人公が、転勤を機に不動産販売業にのめり込んでいく様を描く。


最終的にはどこにも着地しない作品で、ミイラとりがミイラになるように、数字で自己表現することに面白さを覚えた主人公に対する評価は読者に委ねられる作品。

神々の山嶺 夢枕獏

カメラマンの深町はエベレスト登頂を目指すが、仲間二人を亡くして失敗に終わった。

消え入りそうな山への想いと、山に焦がれる気持ちが交錯する中、カトマンドゥで、偶然手に入れた古いカメラを巡って、新たな物語に巻き込まれていく。

カメラは1924年にエベレストに挑戦したマロリーが使用していたものと一致し、前の所有者は日本人であるという。

登山史を根底から覆しうるカメラをきっかけに、伝説の登山家 羽生丈二と出会い、次第に彼の生き方に魅入られ、彼を追いかけるようになる。

痛々しいまでに山に執着した生き方しかできない羽生丈二の生き様をどこまでも真っ直ぐに描き切った作品であると感じた。


作者の夢枕獏さんが「書き残したことはありません」とあとがきに書いた通り、渾身の一作。

天空の蜂 東野圭吾

自衛隊に納品予定だった最新鋭のヘリが何者かの手によって、盗難に遭う。

遠隔操作されたヘリは愛知から北陸に向かい、ある原子力発電所の直上でホバリングする。

犯人からの犯行声明は日本中の原発を止めること、さもなくば、ヘリを墜落させる。

しかし、犯人も予期しなかったことが一つ。奪われたヘリには一人の子どもが乗り込んでいた、、、

残されたわずかな時間で、ヘリの開発者、原発の関係者、自衛隊、地元の警察、愛知の警察、それぞれの場所でそれぞれが残された手がかりから犯人に迫る。ヘリの墜落を阻止できるのか、子どもを救出できるのか。


何に驚くかというと、この作品が約20年も前に書かれた作品であるということ。

3.11以降に巻き起こった原発をめぐる議論に着想を得たわけではないということである。


作品の中で繰り広げられる原発を巡る賛否の議論は3.11以降の現実の世界と大きく異なることがなく、タイムリーな作品にすら感じる。

逆に言えば、20年前からこの議論は未決着のままずっと持ち越されてきたということを感じる作品。


序盤に犯人の一人が明かされ、その人物は犯行を止めようとする側に紛れ込むことになる。読者しか分からないその人物と、捜査側の人物のやり取りは、スリリング。


ただ序盤に犯人が一人が明かされることもあって、サスペンスとしての意外な展開があるというよりは、詰将棋のように、一手一手犯人に近づく捜査の手が、徐々に犯人像を浮かび上がらせる中で、ヘリの墜落までに犯人にたどりつけるかというスピード感、ハラハラ感を感じる作品だった。


上機嫌のすすめ 武田双雲


上機嫌という言葉の反対は下機嫌ではなく、不機嫌。

機嫌にはマイナスカウントがなく、不機嫌はいつでもゼロ。

数で言えば機嫌はいつでも1から始まる正の数だから、いくらでも上に積み重ねることができる。機嫌そのものがすでにポジティブ。


という考え方のもと、上機嫌力を鍛えるすすめを説いてくれる一冊。


一瞬一瞬を楽しみ、感謝する『瞬感の業』など常に世界をポジティブに捉えることの価値を教えてくれる。



『子曰、知之者不如好之者、好之者不如楽之者』

子曰く、

これを知る者はこれを好む者に如かず。

これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。



ちょっと今から仕事やめてくる 北川恵海

ブラック企業で働く青山、日々の辛さから、いつの日か自殺を意識するようになっていたが、ある日出会った同級生のヤマモトのおかげで少しずつ、彼の生活は変わっていった。


ヤマモトは土足で、他人の生活に踏み込んでくるようなタイプの人間で、青山にあれやこれやと指図してくるが、そのことが、青山を変えていく。

しかし一方で、青山はヤマモトが同級生だったという記憶がなく、彼の存在に違和感を覚える。


途中からヤマモトの正体が、見えてきてしまう感はあったが、さっくり読めるので忙しい日々の中、少し立ち止まって、自分を振り返るキッカケには良い一冊と思う。





今さらながらに

今さらながらにブログ開設してみました。

昔、書いていたブログは、いつの間にか、書くのをやめてしまい、サイトも開かなくなってしまいました。

なんとなーく書いてみたくなったので、まあ、そうならない程度には更新しようかな。